▶ 老後のために住宅をリノベーションしたいが、どのようにしたら快適なの?

会社を定年退職した方からの問い合わせです。
若い頃に住宅ローンを組んで建てたマイホーム、32年が経過してリフォームを考えるが‥今はバリアフリーの時代である。
老後のことを考えてリノベーション(機能・性能の向上)をして快適な生活をしたいがどのようにしたら良いのだろうか?

住宅など建物は永久ではありません、浴室・トイレ・台所など水廻りは特に老朽化が早く進みますし、昔の住宅は段差が多く老後の生活には不向きと言えるでしょう。
また、特別養護老人ホームは空きがなく待機されている方が多く、大金を積んで遠方の施設を探すか、住宅をリノベーションしてデイサービス(通所介護)を受けるしかないのが現状ではないでしょうか。

住宅のなかは安全‥誰もが思っていますが
厚生労働省「人口動態統計」によると、家庭内事故死の総数12152人、その内訳は、窒息(食べ物による窒息をふくむ)3768人、溺死3632人、転倒・転落2260人、火災1319人、中毒445人、その他728人(平成24年)

▼ 階段に手摺りを付けましょう!
階段での転落事故で年間600人ほどの方が亡くなっています。
そのような状況で、2000年に建築基準法が改正され「手摺りの設置が義務」になりましたが、それ以前は手摺りの無い住宅が多く、怪我をしないように手摺りを付けましょう!



▼ 脱衣室、浴室を温かくしましょう!
ヒートショックという言葉を聞いたことはないでしょうか?
入浴中に亡くなるのは年間約4000人と推測されていますが、原因の多くはヒートショックである可能性があります。
冬場の入浴では、暖かい居間から寒い浴室へ移動するため、熱を奪われまいとして血管が縮み血圧が上がります。
お湯につかると血管が広がって急に血圧が下がり血圧が何回も変動することになります、 血圧の変動は心臓に負担をかけ心筋梗塞や脳卒中に繋がりますので危険です。


脱衣所や浴室に暖房器具を設置するなどして暖かくしておくことが最も重要です。
浴室内に暖房器具がなくても、浴槽にお湯を溜めるときにシャワーを使って高い位置から浴槽に注いだり、お湯を張った浴槽のフタを開けておくなどすれば浴室内は暖まります。
脱衣室で裸になると「寒い~!」が一番悪い状態です、暖房機などで部屋を暖めてから服を脱ぎましょう。

※壁掛型暖房機、人感センサーですぐに暖かくなります!


▼ 古いタイプの浴室は新しくしましょう!
在来工法の古いタイプの浴室は冬場は特に寒いところです。
組立式のユニットバスも販売当初は断熱がしてなく寒い浴室でしたが、現代のユニットバスは360度(床・壁・天井)を断熱材で包み込むタイプに変貌しており、冬場でも暖かく、低温のサウナに入っているような感じで寒さを感じません。

※在来工法の寒い浴室

 

※360度を断熱材で包み込んだユニットバス

安全のために手摺り・ハンドバーも付けましょう。


▼ トイレも暖かくして手摺りを付けましょう!
住宅のレイアウトを考えると、どうして便所は北側になります(南側は居間、食堂、寝室などになるため)
冬場の便所は寒く血圧が変動する危険な場所かも知れません、また高齢で足腰が弱くなると、しゃがむ、立ちあがる等の動作もままならないようになりますので、暖房器具を置き暖かくして、安全のために手摺りを付けましょう。



▼ ドアは引戸に変えましょう!
日本の住宅は、和洋折衷から和室が無くなり洋風になりつつあります。
洋風となれば各部屋のドアは片開き戸になりますが‥将来、車椅子生活になったら開き戸では開いた時に車椅子に当たりますのでスムーズに出入りができません、有効開口幅は800mm以上必要です。
病院の診察室・病室など‥すべてのドアは引戸です、高齢者・車椅子などは開き戸はNGなんです。



▼ 玄関ポーチにスロープを設置しましょう!
誰しも車椅子の生活にはなりたくないですが
歩行が困難になったら、今の時代では車椅子(電動も有り)で移動するしかありません。
自力走行の場合や介助者での走行で勾配が違ってきますが、一般的には長いスロープになります。





▼ 玄関土間に昇降機を設置しましょう!
玄関は広いほうが良いですが
今の住宅は狭い玄関が多く、車椅子用のスロープ(緩やかな勾配)を設けるのが困難です。
玄関昇降機は色々なタイプがありますが、玄関土間に埋め込むタイプが一番シンプルで場所も取らず良いと思います。

最後に
国土交通省では「健康維持増進住宅研究委員会」が組織され研究成果が順次公表されています。
委員会では、住宅の室内環境性能が優れ、快適であれば、居住者の各種疾病割合が改善されるとし、それによって医療費と休業損失が軽減される経済価値を示しているとのこと。
要は、快適な住宅に住めば病気になることが少なくなり、増え続ける医療費を抑制することができるのです。

 

2020年06月28日