▶ 室内空気汚染による健康被害‥建築物のシックハウス対策と24時間換気について

「シックハウス」ってなんですか?

新築やリフォームした住宅やビルにおいて、建築材料などから発散する化学物質による室内空気汚染のことをシックハウスと言います。めまい、吐き気、頭痛、目、鼻、喉の痛みなど、居住者の様々な健康に影響が生じることを「シックハウス症候群」、「シックビルディング症候群」などと呼ばれています。


シックハウス対策のための建築基準法の改正
シックハウスによる健康被害を防止するため、2003年(平成15年)7月1日にシックハウス対策法令が施行されました。
それまでは、ビニールクロスの糊、建材などは有害な化学物質を使用していましたので、建築現場に行くと目がチカチカするような状況でした。

■主な原因物質ホルムアルデヒド
主な原因物質として取り上げられているのは、ホルムアルデヒドと呼ばれているものです。
子供の頃、学校の理科室の棚にあったカエルの標本は透明の液体に浸かっていましたが、あれはホルマリンといって強力な防腐剤です‥それが気化したものがホルムアルデヒドです。このホルマリンは、接着力が抜群で防腐・防カビ性能も高く、しかも安価ですので建材メーカーは当たり前のように使ってきました。
言い換えれば、新築住宅に入居することは‥気化したホルマリンを吸いながら生活をすることになっていたのです。

■シックハウス対策の概要
シックハウスの原因となる化学物質の室内濃度を下げるため、下記のような規制が導入されました。

(1) クロルピリホスの使用禁止
(2) 有害な化学物質の使用制限
(3) 24時間換気設備の義務付け

(1) クロルピリホスの使用禁止
主に、シロアリ駆除剤として木造住宅の土台などに使用されていた「クロルピリホス」は、通常の換気等で室内濃度を指針値以下に抑制するのが困難であることから使用禁止になりました。
ただし、建築物に用いれらた状態で5年以上経過した建築材料は使用禁止の対象から除外するようです。

(2) 有害な化学物質の使用制限
厚生労働省は、有害な化学物質の室内濃度の指針値を下記のように定めています。
公共住宅などは、完成後の室内環境測定が義務付けられており、化学物質の濃度が指針値以下かどうか測定します。

化学物質 指針値 主な用途
①ホルムアルデヒド 0.08ppm 合板、パーティクルボード、壁紙用接着剤などに用いられるユリア系、メラミン系、フェノール系等の合成樹脂、接着剤、糊などの防腐剤
②アセトアルデヒド 0.03ppm ホルムアルデヒド同様接着剤、防腐剤など
③トルエン 0.07ppm 内装材の施工用接着剤、塗料など
④キシレン 0.20ppm 内装材の施工用接着剤、塗料など
⑤エチルベンゼン 0.88ppm 内装材の施工用接着剤、塗料など
⑥スチレン 0.05ppm ポリスチレン樹脂などを使用した断熱材など
⑦パラジクロロベンゼン 0.04ppm 衣類の防虫剤、トイレの芳香剤など
⑧テトラデカン 0.04ppm 灯油、塗料などの溶剤
⑨クロルピリホス 0.07ppb シロアリ駆除剤
⑩フェノブカルブ 3.8ppb シロアリ駆除剤
⑪ダイアジノン 0.02ppb 殺虫剤
⑫フタル酸ジ-n-ブチル 0.02ppm 塗料、接着剤などの可塑剤
⑬フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 7.6ppb 壁紙、床材などの可塑剤


(3) 24時間換気設備の義務付け
ホルムアルデヒドを発散する建材を使用しない場合でも、搬入される家具などから発散があるために原則として全ての新築された建築物に機械換気設備の設置を義務付ける。

(建材以外の化学物質の発生源)
 1. 新しい家具、カーテン、じゅうたん
 2. 家具や床に塗るワックス
 3. 防虫剤、芳香剤、消臭剤、洗剤
 4. 化粧品、香水、整髪料
 5. 開放型ストーブ


シックハウス対策
室内空気汚染による健康被害を防止するために、下記の3つの対策を満足しなければなりません!
(対策Ⅰ)内装仕上げの制限
(対策Ⅱ)24時間換気設備設置の義務付け
(対策Ⅲ)天井裏などの制限

(対策Ⅰ)内装仕上げの制限
内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する建材の面積制限をします。

<建築材料の区分>

建築材料の区分 ホルムアルデヒドの発散 JIS、JASなどの表示記号 内装仕上げの制限
建築基準法の規制対象外 放散速度5μg/㎡h以下 F☆☆☆☆ 制限なしに使える
第3種ホルムアルデヒド発散建築材料 5μg/㎡h~20μg/㎡h F☆☆☆ 使用面積が制限される
第2種ホルムアルデヒド発散建築材料 20μg/㎡h~120μg/㎡h F☆☆☆ 使用面積が制限される
第1種ホルムアルデヒド発散建築材料 120μg/㎡h超 旧E2、Fc2又は表示なし 使用禁止






 F☆☆☆☆
 (フォースター)

有害な化学物質を発散しない安全な建材です。



建材などのメーカーは、建築基準法の改正に合わせて「制限なしに使える」の商品に移行しましたので、一部の商品を除きF☆☆☆☆ですので安心です。

(対策Ⅱ)24時間換気設備設置の義務付け
原則として全ての建築物に機械換気設備の設置を義務付けます。
換気設備には、下記のような3種類の換気方法がありますが個人住宅では第3種換気設備が一般的です。

 給気機+排気機      給気機+排気口     給気口+排気機

       給気口                 24時間排気機

(対策Ⅲ)天井裏などの制限
天井裏などから居室へのホルムアルデヒドの流入を防ぐための措置をします。
次の①~③のいずれかの措置が必要になります。

①建材による措置
天井裏などに第1種、第2種のホルムアルデヒド発散建築材料を使用しない(F☆☆☆以上とする)
②気密層、通気止めによる措置
気密層または通気止めを設けて天井裏などと居室とを区画する。
③換気設備による措置
換気設備を居室に加えて天井裏なども換気できるものとする。


室内空気環境測定をしましょう
実際に化学物質が指針値以下か否かを測定します。
検査費用は安いので完成後に実施されたら安心ではないでしょうか。

<アクティブ型サンプリング><パッシブ型サンプリング>

24時間換気の問題点
24時間換気の目的は、室内の空気汚染による健康被害を防止することで、単に外気を取り入れ、室内の有害物質を排気することですが‥問題点は多くあります。

<問題点>
(1)換気扇を付け放しにすると冷暖房の効きが悪いのでスイッチを切ってしまう。
(2)換気扇のファンの音がうるさいのでスイッチを切ってしまう。
(3)電気代がもったいないとの理由でスイッチを入れない。
(4)冬期に外気が入ってくると寒いので給気口を閉じてしまう。

以上のような理由で換気扇・給気口を止めてしまうようです、この対策は、現状にそぐわないようですので100%有害物質を発散しない建材・家具などが必要ではないでしょうか?

外気を取り込めばOKなの?
24時間換気とは、外気を取り込み、室内の汚染した空気を外に排出することですが‥はたして、その通りでしょうか?
大気が汚染した都市部と、空気の綺麗な田舎では違います。
いまは、給気口用のフィルターが販売されていますので花粉・ホコリ・排気ガスなどはある程度は除去できるようです。
このシックハウス対策は、地域性を考慮していませんので、大気の汚染した地域などはフィルターで防ぐなど対策が必要です‥高機能な空気清浄機を設置したほうが良いかも知れませんね!?

       大気の汚染した地域

       空気のきれいな地域

2003年05月22日