▶ 建築設計事務所って、どのような仕事をするの?

事務所の紹介ページで、簡単に業務内容をお知らせしていますが、日常会話のなかで「設計事務所ってどんな仕事をするのですか?」と質問を受けることがあります。
言葉のごとく、建築の設計が主たる業務ですが施工会社と勘違いされる方もおられ‥他にも付随する業務があります。
一般的な、木造2階建て個人住宅の場合を例にあげて説明をさせて頂きます。

(業務内容)
1. 企画業務
2. 測量業務
3. 地盤調査業務
4. 基本設計業務(建築・電気設備・機械設備)
5. 実施設計業務(建築・電気設備・機械設備)
6. 積算業務
7. 見積り業務
8. 工事監理業務
9. 各種申請業務
10. 耐震診断業務
11. その他
※ 3階建て住宅など階数・規模などにより構造計算が必要な場合を除きます。

1. 企画業務
建築主の希望される生活空間、配置、間取りなどをお聞きします。
家族構成、好みのタイプ、ご予算、返済計画、将来の増築予定など考慮して企画していきます。
しかし、ご希望通りの計画をしても、ご予算と合わないことも‥計画と予算は平行して考えていきます。
最終的には、ご希望の優先順位を決めて頂きます。
この時点では、専門家としてアドバイスをしながら平面・配置計画などの提案を行います。


2. 測量業務
敷地を測量して、敷地面積の求積、各ポイントの高さなどを測定します。
 平板測量:敷地を測量して面積を求積します、また方位も測定します。


 レベル測量:敷地の高さ、前面道路の高さ、隣地の高さなどを測量します。

. 地盤調査業務
現地の調査及びその周辺おおむね半径50mの周辺状況を調べます。
周辺状況を観察することで土地の過去の履歴や地形を推定します。道路や近隣建物に、亀裂や陥没などが見受けられたり、川や池などが存在する場合、軟弱地盤の可能性があります。建物を建てる予定位置の地盤を調査します。
一般的には、スウェーデン式サウンディング試験が安価で小規模建物に適する調査方法です‥専門業者に依頼します。
調査は、建物の両端2ヶ所ほどを地表面から深さ10mまでの試験を行ないますが、(財)住宅保証機構では建築物の4隅を義務付けています。


 


4. 基本設計業務(建築・電気設備・機械設備)
建築主のご希望を網羅した平面図・立面図などを作成し「提案図」として提示します。
提案図を持参して、設計主旨・使い勝手などを説明させて頂きますが、双方のイメージ等の相違などで変更が生じます。
提案図がA案からB案・C案・D案‥と変更を重ねて行きますと、ほぼ基本設計はまとまってきます。
この、基本設計の段階が非常に大切で、時間を掛けて協議を重ねることが必要です。
基本設計が終わる頃には、建築主の皆さんは「ボンヤリと頭に生活空間がイメージできるようになった」と言われます。




5. 実施設計業務(建築・電気設備・機械設備)
基本設計をもとに、建築・電気設備・機械設備の詳細な「設計図書」を作成します。
(建築図面)
1. 特記仕様書-1~4
2. 外部仕上表・設計概要
3. 内部仕上表
4. 敷地面積求積図・求積表
5. 延べ床面積表・建築面積表
6. 軸組計算表
7. 耐力壁の配置
8. 現況図
9. 配置図・附近見取図
10. 1・2階平面図
11. 屋根伏図
12. 断面図・立面図
13. 1・2階平面詳細図
14. 矩形図-1・2
15. 1・2階天井伏図
16. 展開図-1~4
17. 1・2階建具配置図
18. 建具リスト-1~3
19. 基礎伏図・詳細図
20. 1・2階床伏図
21. 小屋伏図
22. 厨房機器詳細図
23. UB詳細図
24. 部分詳細図
25. 屋外付帯配置図
26. 屋外付帯詳細図
(電気設備図面)
1. 特記仕様書
2. 凡例表・盤結線図
3. 引込み鋼管柱外観図・端子盤外観図
4. 照明器具姿図
5. 1・2階幹線・コンセント・弱電設備図
6. 1・2階電灯設備図
                     
(機械設備図面)
1. 特記仕様書
2. 給排水衛生設備配置図
3. 衛生設備機器・器具表・桝リスト
4. 1・2階給排水衛生設備平面詳細図
5. 1・2階換気設備機器表・換気計算表
6. 1・2階換気設備平面詳細図
7. 1・2階冷暖房設備平面詳細図

約40~50枚の図面を作成します。なぜ、こんなに図面が必要なのでしょう?

それは、工事費用の正確な算出には図面が必要なのです。
図面を見て数量を積算します‥数量×単価の集計が工事費用になりますので、図面がないと正確な費用の算出ができません!
例えば、日曜大工で「犬小屋」を造るとします‥簡単な図面を書いて床・壁・屋根材の大きさを決めて数量を出します、そして材料を購入して8,000円を支払いました‥これが工事費用になります。
建築主には、建築・電気・機械の図面を説明します。使い勝手や動線、コンセントの位置、エアコンの位置、給排水管の位置など‥全てを図面に網羅します。

現場で施工する各業種の職人さんは図面を見ながら仕事をしますので、細部に渡って図面が必要になります。
将来、増築・改造などの時に「この柱を取りたいけど大丈夫?」など、図面があれば構造材の寸法、電気配線の位置、給排水配管の位置などが一目瞭然ですので安心です。
余談ですが、増築・改造などの設計依頼を頂き、訪問して‥「お家の図面はありますか?」と尋ねますが、大工さんに直接依頼された住宅は図面の無いことが多く、現況図面の作成が必要になります。
また、図面が無いと構造材などの確認をするために天井裏に上がる必要が生じますが完璧な把握は難しいです。

6. 積算業務
設計図面より使用する材料等の数量を算出します。
例えば、コンクリート○○m3、鉄筋○○ton、材木○○m3、屋根瓦○○㎡、クロス○○㎡など‥
ただし、積算基準がありますのでルールを守らないと正確な数量は算出できません!
ルールブックとして、建設大臣営繕部監修の「建築数量積算基準」を遵守して積算業務を遂行します。
正確な数量を積算できれば、あとは単価を掛ければ工事費用が計上できます。

7. 見積り業務
積算業務で算出した数量に単価を掛けて工事費用を見積ります。
単価は「市場単価」を挿入しますので実質単価とは少し違いが生じます、見積書として一般的な経費を計上して集計のうえ建築主に提出します。
施工会社に設計図書を渡して見積りを依頼しますと少なからず金額に相違がでます。例えば、A建設3,000万円、B工務店3,200万円、C建築2,900万円など。
なぜ、金額が違うのでしょう?
理由として、経費の乗率が違う、積算数量の違い・項目計上のミスなどが考えられますが‥内状として、受注物件が少なく儲けが少なくても良いから仕事が欲しい状況であるなどがあります。

見積書の内訳は、建築主体工事+電気設備工事+機械設備工事+諸経費などです。
下記の科目内訳項目ごとに金額を算出します。
(見積りの内訳)
 <建築主体工事>
1. 仮設工事
2. 土 工事
3. 鉄筋工事
4. 型枠工事
5. コンクリート工事
6. 防水工事
7. 組積工事
8. 石 工事
9. タイル工事
10. 木 工事
11. 屋根・樋工事
12. 金属工事
13. 左官工事
14. 鋼製建具工事
15. 木製建具工事
16. 塗装工事
17. 内・外装工事
18. 雑工事
<電気設備工事>
1. 電灯コンセント工事
2. テレビ共聴設備工事
3. 電話空配管設備工事
4. インターホン設備工事
5. 換気扇設備工事
6. 照明器具設備工事
7. 引込み幹線設備工事
<機械設備工事>
1. 給水設備工事
2. 給湯設備工事
3. ガス設備工事orオール電化設備工事
4. 空調設備工事
5. 排水設備工事
6. 雨水設備工事
7. 衛生器具設備工事
<諸経費>
1. 共通仮設費
2. 運搬費
3. 現場経費
4. 一般管理費


8. 工事監理業務
工事が設計図書のとおりに施工されているか否かを確認して文書で建築主に報告します。
施工会社が決まり、契約締結後にいよいよ住宅の建築に着工します。
基礎工事から始まり各業種の職人が出入りします。現場では不具合な箇所や図面の通りに施工していない場合には監理者が是正指示を行います。それでも、業者が不適切な施工を行うなどした時は、建築主に報告のうえ業者の変更を行います。


設計者が監理者を兼ねることが一般的ではありますが‥監理内容は「重点監理」と言い、ポイントことに検査を行ないます。
誠意のある業者ですと「手抜き工事」は無いと思いますが、建築基準法などの知識がなくて「知らなかった」‥は、結果として手抜き工事になります。 特に、隠蔽部分は後からは分りませんのでシッカリとした検査が必要です。
いまは、建築基準法の厳格化で厳しく又複雑になってきましたので注意が必要です。

<工事監理検査項目>
1. 縄張り・遣り方検査
2. 設計GL・BM確認検査
3. 床付け検査
4. 基礎配筋検査
5. コンンクリート打設立会い検査
6. アンカーボルト・HD金物位置検査
7. 材木検査(含水率・寸法など)
8. 建て方・軸組検査
9. 防腐・防蟻処理検査
10. 外壁・屋根検査
11. 内装検査
12. 完了検査
13. 電気設備中間検査
14. 機械設備中間検査

※ 上記の検査を行ないます、業者には工程ごとに写真撮影をして頂き提出をしてもらいます。


9. 各種申請業務
建築確認申請、完了検査申請、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の申請、住宅性能評価申請などの代理申請を行います。
全てが代理申請になりますので、建築主より「委任状」を頂き業務を遂行します。
平成17年に明らかになった構造計算書偽装事件は、一級建築士が構造計算書を偽装し、多数のマンション等の耐震性に大きな問題を発生させ、多くの住民の安全と居住の安定に大きな支障を与え、国民の間に建築物の耐震性に対する不安と建築界への不信を広げました。
平成19年6月に建築基準法・建築士法の改正が行われ‥建築基準法の厳格化、建築士及び建築主に対して罰則が強化されました。
建築士は「襟を正す」必要がありますが、申請業務が厳しく複雑になっていますので確認期限の延長など‥すんなりと業務が進行しない状況です。


木造住宅の耐震診断を行い補強方法など提案します。
阪神・淡路大震災では、多くの建物が被害を受け6,434人もの尊い命が奪われました。
直下型地震でしたので、家屋・家具等の倒壊による人的被害が大きく、犠牲者のうち9割近くが圧死という状況でした。


昭和56年6月に建築基準法が改正され、耐震基準が強化されましたので改正前の基準で建てられた住宅は耐震性が不足しています。 国・兵庫県などは、地震から人命を守るために、耐震診断・改修などに補助金を出していますが、条件があり、また「喉もと過ぎれば‥」なのでしょうか、なかなか普及していないのが現状です。
流れとして、弊社のように耐震診断に関する研修を受けた建築士(簡易耐震診断員)を市町経由で派遣して住宅の安全度を確認します。
診断の結果を「耐震診断報告書」として総合評点を付けます。

1.5以上は「安全です」
1.0~1.5未満は「一応安全です」
0.7以上~1.0未満は「やや危険です」
0.7未満は「倒壊または大破壊の危険があります」

所見として、何処がどうなので補強が必要なのか?を記入します。
仮に、0.7未満と評点が付いても耐震改修は義務ではありません。費用が高額(120万~200万)ですので改修など補強工事が出来ないのが現実のようです。
国は、2008年度から補助対象となる住宅の条件を撤廃するとともに、現行の補助率も上積みするようですが‥地方自治体の負担も増えるようですのでどうなりますか?

11. その他
マイホームの建築とは、人生のなかで大きな買物ではないでしょうか?
大多数の方が一生に一度の買物ではないでしょうか?
ローンを組み、長期の返済を行いますので建築主の皆さんは真剣です。設計者として、お手伝いできる喜びと責任の重さを常に感じています。建築主とは、企画から竣工まで約10ヶ月前後のお付合いになります。時には、食事をご一緒してお酒を酌み交わしながら会話を交えることもあります。

№1~10の業務以外に下記のような依頼を受けます。

 見積書の査定
施工会社から提出された見積書を査定します。
項目が抜けていないか?金額は高いのか、安いのか?‥などです。
A建設、B工務店、C建築など会社によって見積り金額に差がでますのでどの業者が適切な金額なのか査定を行います。
できれば、2~3社へ見積りの依頼をされることをお勧めします。

 地鎮祭への同席
地鎮祭とは地主神を鎮めるとともに家の繁栄と工事の無事を祈る儀式のことをいいます。


 仕上げ材の決定(床材・壁材・天井など)
床のフローリング、壁のビニールクロス、天井材など‥種類が色々ありますので迷ってしまいます。
悩まれた結果、設計者に選択決定を依頼されることがあります。


 色などの決定
特に、外壁の色はなかなか決まりません‥色の好みは人によって様々です。色サンプルを作成して提示しますので、じっくりと検討して頂けます。


アドバイスとして、小さい色サンプルは濃い色に見えますので、大きな外壁面に塗るとサンプルより薄くなって見えます。
また、屋根・外壁などは酸性雨や太陽の直射日光にさらされますので、2~3年も経つと色あせてきますので少し濃い目の色をお勧めします。
しかし、永久的な塗装などは有りませんので10年周期でのリフォームは必要ですね。


2016年07月07日